強制連結法

強制連結法とは

強制連結法(compulsory linkage)は、教師が学習者のレディネス(既有スキーマ・準備性・既習度)や課題解決における思考過程を知るための手法です。

強制連結の方法

強制連結は、発端部と帰結部に入る2つのキーワードを与え、学習者が途中に関連するスキーマを連想しながら挿入し、2つのキーワードを連結(リンク)していきます。外化されたスキーマの数や連結の論理性・妥当性などから、学習者のレディネスを把握することができます。

強制連結の具体例

例えば、発端部に「ロケット」、帰結部に「ジャガイモ」というキーワードを設定します。この2つのキーワードの間に連想によってスキーマを書き出し、帰結キーワードまで連結します。

下図は、日本人大学生とミャンマー人留学生による強制連結の例です。日本人大学生が、「ロケット」から「カウントダウン」、「宇宙」、「NASA」などの単語を連想しているのに対し、ミャンマー人留学生は、「ロケット」から「兵器・戦争」を連想しています。このことから、日本人大学生とミャンマー人留学生の思考がまったく異なっていることがわかります。

このとき、教師が留学生に対して、「NASA」→「アメリカ」→「ファーストフード」といった授業展開をしてしまうと、学生は自分のもっている既有知識とリンクすることができません。つまり、授業展開をイメージ化することができないために理解することが難しくなってしまいます。

教師は、学習者が2つのキーワード間をどのような単語と順序で連結していったかを分析することによって、学習者の既有知識や技能・経験、興味関心の方向性などをあらかじめ把握することができます。この分析結果に基づいて、学習者の特性と学習テーマの特徴にもっともふさわしい授業設計を行えば、教師と学習者間の思考のズレを防ぎ、学習者にとって「わかる授業」を展開することができるでしょう。

強制連結法の例

強制連結法による授業設計

教師が授業を設計する一つの手法として、強制連結法を利用することができます。強制連結法は、与えられた2つのキーワードをもとに関連するスキーマを連結するものです。教師が強制連結法を実施した場合、授業内容の論理性や妥当性を確認することはできても、学習者を意識しない一方的な論理展開になります。そのため、誰に、何を伝えたいのか、対象者と目標をまず明確にすることが必要です。

授業設計に利用する強制連結の概念図を下に示します。2つのキーワードとして、発端部には「対象者(誰に伝えるのか)」を、帰結部には「学習目標(何を伝えるのか)」を設定します。

授業設計に利用する強制連結法の概念図

例えば、高齢者(シルバー大学受講生)を対象として、「SARS」について興味関心をもってもらうよう動機付け(導入段階)のための授業設計を考えてみます。強制連結の記入シートには、発端部に「高齢者」、帰結部に「SARS」が入ることになります。そして、高齢者にとって身近で馴染み深い事柄を連結していくことでわかりやすい論理展開を図りたいと考えます。それでは、連結例を確認してみましょう。

連結スキーマ
高齢者
第二次世界大戦
戦後
科学技術の発展
湯川秀樹
ノーベル賞
コッホ
結核
集団感染症
SARS

まず、高齢者について、「第二次世界大戦」前後くらいの年齢層ではないかと考えました。第二次世界大戦の後、日本は「戦後」という時代を迎え、日本の再興と共に「科学技術が再び発展」した時代ではないかと思います。その頃、日本で一躍注目を浴びた人物に「湯川秀樹」という人物がいます。湯川秀樹は、日本で一番初めに「ノーベル賞」を獲得した人物です。ノーベル賞と言えば、同様に有名な人物に「コッホ」という人物がいます。コッホは、「結核菌」を発見した人物として大変有名です。結核と言えば、戦後日本で「集団感染症」として蔓延した病気です。そして、現在蔓延している集団感染症が「SARS」です。

強制連結法のねらい

教師には、学習者にとって「わかる授業」「楽しい授業」を実践することが求められます。そのためには、学習者のレディネスに配慮することが重要です。強制連結法を学習者に実施することによって、学習者の背景知識や既有知識をあらかじめ把握することができます。教師は、これを踏まえて、学習者にとって馴染みの深い事柄を授業の発端とし、わかりやすい論理展開によって学習の到着目標まで導くことが可能となります。

さらに、学習テーマが学習者の興味を引き付けるものであれば、自分の力で課題を解決していこうとし、学習意欲は持続するでしょう。学習者は、自分の既有知識と学習内容を関連づけることで新しい知識を再構築することができ、より主体的に学習活動に参加することができます。

強制連結法は、教師が学習者の既有知識や経験を測るだけでなく、学習者自身が自らの思考経路を把握することができます。そのため、論理的な思考力、課題解決能力、相手の立場にたった論理展開などを学習者に総合的に学ばせることが可能です。